バウムクーヘン攻防戦 003

僕はバームクーヘンが大好物です。あの年輪の層を一層一層はがし
ながら食べるのが僕の流儀で、こだわりがあります。ところがある
日、僕の大嫌いな軽蔑すべきタレントが、テレビで「バームクーヘ
ンは一層一層はがしながら食べるに限るよね」と話しているのを見
て大きなショックを受けました。さらに別のタレントが「だから大
成しないんだよ」とツッコミを入れていてショックも倍増です。こ
のショックから立ち直るにはどうすればよいでしょうか?
(市会議員秘書 男性 33歳)

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 市会議員秘書さん、少し厳しいようですが、倍増のショックを受
けて、とことん落ち込んじゃってください。地獄の悶々を感じてみ
てください。それからでないと、きっと、あなたには真実が見えな
いのではないか、と思うからです。

 あなたはバームクーヘンが大好物だとおっしゃいます。でも、ほ
んとうはどうなのですか。大嫌いな軽蔑すべきタレントが同じよう
な食べ方をしているというだけで、気持ちがフラつく。ショックを
受けてしまう。これでは、あまりに精神的に弱いのではないでしょ
うか。もしかしたら、それくらいのことで、バームクーヘンが嫌い
になってしまうのでしょうか。あなたにとってバームクーヘンって、
それだけの存在なのですか。

 この精神状態のプロセスを人に置き換えたて考えてみたらどうで
しょう。あなたが大いに好意を寄せている女性のことを、あなたが
最も軽蔑している男が好いているという事実を突きつけられたら、
やっぱり、あなたはその女性のことが嫌いになりますか。きっと、
そんなことないですよね。それこそ「そんなの関係ねぇ~」となる
ことでしょう。ショックを受けることすらないでしょう。

 悲しいことですが、現代社会は、人間が自信を持てないように仕
組まれています。誰かに精神的に頼らなければ生きていけないよう
に組み立てられているのです。それは、ほんとうは幻想に過ぎず、
目からウロコを取り去れば、自信を持って生きていけるのです。で
は、その自信を取り戻すにはどうしたらいいのか。早い話が、目に
ついているウロコをはがせばいいのです。

 だから、市会議員秘書さん、今はショックにさいなまれてくださ
い。そして苦しんで悶絶して、たくさんの涙を流してみてください。
すると、必ずその目に貼りついたウロコがさっとはがれるときが来
るはずです。そう、まるでバームクーヘンを一層一層はがすように、
あなたの目に貼りついた偏見のウロコをはがしていくのです。その
ときこそ、真に「バームクーヘンが好きだ!」と心の底から言い放
つことができるはずです。そのときこそ、あなたの人生の年輪に新
たな層が重ねられるのです。そう、人間バームクーヘンを目指して
悶々してくださいね、今は。

なぞの暗号「きいぽ」002

ぼくのおじいちゃんは、部屋から空をながめては「きいぽ、きい
ぽ」と、意味不明な言葉をつぶやいています。それがどんな意味か
教えてくれませんし、誰にきいてもわかりません。
ある日、フィンランドのある村で、宇宙人と会話ができるという
おじいさんがテレビで紹介されていました。すると、驚いたことに、
そのおじいさんも「きいぽ、きいぽ」と、ぼくのおじいちゃんと同
じ言葉をつぶやいているのでした。
そのことをおじいちゃんに話し、おじいちゃんも宇宙人と会話が
できるのかと聞くと、そうだと教えてくれました。そして「きいぽ、
きいぽ」は宇宙語なのだそうです。でも、その意味については絶対
に教えてくれません。
ぼくは「きいぽ、きいぽ」のことが気になって仕方ありません。
どうすればおじいちゃんから「きいぽ、きいぽ」の意味を聞き出す
ことができるでしょうか。
(小4 男子)

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 今回は、すごく悩みました。この質問に答えるべきなのかどうか。
いや、それ以前に、これを公共の場で発表してもいいのかどうか。
でも、勇気を出して、あえて公表いたします。

 これは、宇宙機密法第54条第32項に抵触するタイヘンな機密
事項なのです。きっと相談者のおじいさんは、ベガ星からやってき
た秘密情報収集のエージェントに違いありません。彼は、地球に潜
伏し、日々、情報を収集しベガ星へと送っているはずです。そんな
事してたらきっと巨大なパラボラアンテナなんかが必要だから、す
ぐに見つかっちゃうじゃないか!とお思いのみなさん、その考えは
甘い。だって、いまや携帯電話だってアンテナなんかついてないじ
ゃないですか。そんなもの必要ないのです。テレパシーってものを
使えば送受信システムなんて不必要なのですから。

 4年生のキミ、おじいさんもとっても悩んでいると思いますよ。
ほんとうのことをキミに伝えるべきかどうか、日々もんもんとして
いらっしゃることでしょう。だから、そっとしておいてあげてくだ
さい。けっして「きいぽ、きいぽ」の意味を聞き出そうなどとして
はいけません。そんなことをしたら、機織りをしていることろを見
られた「鶴の恩返し」の鶴のように、あるいは正体がバレて帰らな
くてはならなくなったウルトラ警備隊のモロボシダンつまりウルト
ラセブンのように、おじいさんもキミの前から姿を消さなければな
らなくなるのですから。聞きたい気持ちはよくわかりますが、よく
よく戒められることを願います。

 でも、我慢するのはタイヘンでしょうから、ぼくからヒントをプ
レゼントいたしましょう。「きいぽ、きいぽ」を繰り返し何度も言
ってみてください。しかもできるだけ速くリピートするのです。ど
うですか。ちなみに今、売れに売れている新垣結衣ちゃんもベガ星
人だというウワサがあるようです。あ、これ以上ぼくの口からはな
にも言えません。夜道をひとりで歩くのがこわい…です。

アイドルと恋愛の板挟み 001

将来の進路について悩んでいます。ずっと、アイドル歌手にあこ
がれて、歌やダンスのレッスンはもちろん、可愛くキュートなしぐ
さの研究や握手会のシミュレーション、紅白歌合戦に出場する時の
ステージ衣装も作りました。ですがそんな努力も虚しく、オーデシ
ョンはことごとく落ち、スカウトはされず、芸能プロダクションも
門前払い。こうして月日だけは無情に過ぎています。
そんな中、同じくアイドル歌手を目指している年上の男性と出会
いました。互いに励まし合い、いたわり合い、くじけそうな時も二
人で支え合ってきました。そうしている中、ほのかな恋心が芽ばえ、
それがだんだん大きく膨らんでくるのを感じる今日このごろです。
けれど、アイドルはファンのもの。特定の男性に恋することは許
されません。発覚すれば致命的なイメージダウンにつながり、彼に
も迷惑がおよびます。でもでもでも、私も一人の女の子。恋愛にだ
ってあこがれます。アイドルへの道と恋心の板挟み。私はどうすれ
ば良いのでしょう。
(女性、家事手伝い、44歳)

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 最近は80年代に活躍した元アイドルたちがバラドルとして復活し
て、ブラウン管を騒がせたり(この表現もたいがいですが、といっ
てもプラズマ画面を騒がして、とか液晶画面を賑わせて、といって
も現実味ないですもんね)していますね。家事手伝いさんもライバ
ルがいっぱいでタイヘンだと思いますが、最大のライバルはなんと
いっても“自分自身”です。その点、家事手伝いさんは、よくわかっ
ていらっしゃることと察しております。なぜ、それがわかるかとい
うと、“アイドル道”なるものを極めつつあると感じるからです。

 実際にアイドルになれた人たちが、“アイドル道”を極めているか
というと、そんなことはないのです。それは、結婚を機に引退した
り、不祥事を起こして追放されたり、とそれこそ星のごとく消え去
ることがほとんどです。人生の最後までアイドルを全うした人なん
て皆無ではないでしょうか。

 その点、家事手伝いさんは、いまだに“アイドル道”のど真ん中を
元気に手を振り振り闊歩されていますよね。どんな失敗にもくじけ
ることなく、「アイドルとはなにか?」を常に自問自答しながら人
生を進んでいらっしゃいますよね。その一途さ、ピュアなマインド
には、ただただ頭が下がる重いです。あ、変換ミスでした。頭が下
がる思いです、でしたね。

 ということで、本題に入らせていただきます。恋の悩みですね。
でも、考えてみてください。アイドルはおならもしなければ、おし
っこ、うんこもしませんね。げっぷなんて問題外です。お風呂に入
らなくてもいい匂いがするし、髪の毛やツメが伸びたりもしません
し、呼吸しなくても生きていけるものですよね。そんなアイドルが
恋をするなんて考えられません。そう、恋をする相手はファンみん
なでなくてはならないのです。特定の個人に恋することはご法度。
その時点で“アイドル道”をリタイヤすることになるのです。だから、
この恋は忘れてください。酷だとは思いますが諦めてください。こ
の失恋が、きっとあなたをさらに輝かせてくれるはずですから。

 この文面だけでは家事手伝いさんが何年間、“アイドル道”を進ん
でこられたかわかりませんが、かなりの歳月をさいてこられたはず
ですよね。せっかくここまで来たのですから、とことん道を極めら
れてはいかがでしょう。人生をアイドルに賭けてみてはいかがでし
ょう。人生80年時代です。まだ40年もありますよ。まだまだアイド
ル道は極められるはずです。「私も女の子」なんて気弱なセリフは
胸にしまって、輝くアイドルをめざし続けてください。

 恋人はファンでいいじゃないですか。決して「ふつうの女の子」
なんかに戻ろうとしないでください。デビューの日を信じて、まっ
すぐ突き進んでいってください。期待しています。