

「カナカナカナ…カナカナカナ…カナカナカナ…」
声は最期になるほど小さく消え入るように響きます。
芭蕉が詠んだ“閑けさや岩にしみ入る蝉の声”は
このヒグラシの声だといわれています。
夏の夕暮れどきに聴くこの声はなんとも切ないものです。
しかし、ご存知ですか?
やつらは朝方にも鳴くのですよ。それも大合唱で!
仕事がら、家で徹夜仕事をすることがあります。
ゆっくりと白んでゆく外の気配を感じながら
言葉をあれやこれやといじくっているのは
なかなか風情があっておもしろいものです。が、
が、しかしなのです。
この季節が夏だったら、もう最悪です。
朝日が上ったかな、というころから
あのヒグラシの大合唱がはじまるのです。
あっちで「カナカナカナ」こちらで「カナカナカナ」
なぜ、夕方のように静かに輪唱できないのでしょうか。
まるで声のバトンをつないでいくように
閑やかに、余韻を持たせて鳴くことはできないようです。
元気なヒグラシって、ちょっとイヤですね。
楽しかった言葉の旅も小休止に入らなければなりません。
その喧しさは、尋常ではないからです。
その大音量で、思考は停止し、
な~んにも考えられなくなってしまうのですから。
ヒグラシは気温を感じとって鳴くといわれているそうです。
他の説としては、明るさに反応しているというのも
あるそうですが、どちらが正解か、むずかしいですね。
先日は、昼過ぎの夕立のあとに鳴いていましたから。
そのときは涼しかったし、少し暗かったので
どちらなのかは、いまだに確かめられていません。
最近は、ミンミンゼミやアブラゼミに交じって
ツクツクホウシの声が聴かれるようになってきました。
季節は、知らず知らずのうちに秋に向かっているようです。